アメリカ観光の盲点(2):観光施設が閉鎖する時期って?

<写真上:観光施設閉鎖の案内掲示>

前回、アメリカの観光施設の閉鎖が、予算案が可決できずに政府機関が閉鎖して起こることを簡単に説明しました。現地のニュースでは、”Shutdown Showdown”という見出しで連日報道されています。この記事を掲載したときには閉鎖して既に17日が経過、未だ与野党、トランプ大統領、妥協の兆しが見えません。

アメリカの政治に興味が無くても、アメリカ観光は楽しみですよね。でもせっかく観光に来ても、観光名所が閉まってるというのは困ります。
というわけで、アメリカに旅行に来るときは、政治に興味は無いにしても、できればアメリカの議会の動きを少しだけ注目して見ておくことをお勧めします。

でも、普通の人にはアメリカ議会のことなど正直言ってよく分かりません。特に日本人が、アメリカのそのあたりを知るのは意外と大変です。日本の報道でも、アメリカ政府の予算がどのように決まるのか、どういったときに揉めるのか、そして、観光施設が影響を受けるか、というのはあまり事前にニュースで報道してくれません。観光名所が閉鎖されて初めて報道されるぐらいでしょうから、旅行に来ている人にとってはそれでは遅すぎます。

観光名所の閉鎖の流れ

アメリカの観光名所の閉鎖は、政府機関の閉鎖から起こります。そして、政府機関の閉鎖は、政府の予算が可決されなかったときに起こります。これは、予算が可決されないと国家公務員の給料が支払えないため、職員が強制的に自宅待機させられるため、職場がお休みになってしまうからです。
ですので、アメリカの観光名所といっても、影響を受けるのは国が運営している施設だけです。ただ、前回言ったように、国立公園であるグランドキャニオンや、DCのスミソニアン博物館など、国の運営する観光名所は結構多いので、観光への影響は甚大です。

さて、これらを予測するにはアメリカ議会の動きを見る必要があります。
アメリカは上院・下院という議会編成で、上院と下院の両方の賛成を経て法案が成立します。
今回の政府機関閉鎖は、共和党であるトランプ大統領が大統領選の際に公約としていたメキシコ国境との壁建設の予算を要求しているからで、野党民主党がこれに反対しており、与野党双方未だ妥協できていない状況です。

今回の政府機関閉鎖の流れ

まず、アメリカの予算年度は毎年10月~9月末という期間で動きます。国は、予算が決まらなければ職員の給料も出させないので、予算法案を可決することは絶対に必要なことです。
本来なら10月になる前に新年度予算が決まればいいのですが、近年はそれまでに決まらないことがほとんどです。だったら、9月末までに決まらなければ10月にも政府機関閉鎖しちゃうのでは?と思うかもしれませんが、通常は、1ヶ月~2ヶ月ほどの暫定予算を可決して与野党ともに時間を稼ぐため、10月に長期間にわたって政府機関閉鎖となることは(なくはないですが)少ないです。
短期間の暫定予算を何度か繰り返しながら、その間に与野党協議して妥協するのが普通ですが、互いに妥協しないと最終的にどこかで暫定予算を可決せず、政府機関閉鎖という事態に発展してでも勝負に出ることがあります。

なぜ年末年始あたりが怪しいかというと、例えば2018年は11月に中間選挙と言われる国会議員の選挙がありました。ですので、10月に政府機関を閉鎖なんてして国民の反感を買うと、11月の選挙に影響するので、まずは与野党とも暫定予算を通して12月まで問題を先送りしていました。
で、この11月の中間選挙で、下院は民主党が過半数をとり、上院は共和党が過半数を取る、といういわゆる”ねじれ国会”が誕生することになりました。ですので、法案は通りづらくなります。

もちろん、政府機関を閉鎖することはトランプ大統領にとっても国民の反感を買う恐れがありますが、そこまでしてなぜこの時期に政府機関を閉鎖してまで、メキシコ国境の壁建設費を要求しているのでしょうか。
一つは、トランプ大統領の4年の任期が既に残り半分となっていること。ここらで、自分の大統領選の公約を実現したい想いがあるからでしょう。
もうひとつは、中間選挙で下院が民主党過半数となり、今後は共和党主導で法案が通りづらくなるので、ここらで勝負せざるをえない、と考えたのでしょう。

法案は、上院・下院の両方の可決が必要となるアメリカ議会において、下院が民主党過半数、上院が共和党過半数という構成では、互いに妥協しない限り法案は通らない状態にあります。
じゃあ、永久に予算が通らないのかというと、そういうわけではありません。政府機関の閉鎖は現在は一部だけですが、長引けばあらゆる機関が閉鎖となっていき、国民の生活にモロに影響が出始めます。観光名所の閉鎖なんて可愛いものではなくなってくるのです。そうなれば与野党双方とも国民の反感を買うので、共和党も民主党も互いにどこかで妥協して、予算を通すしかなくなります。(そのはず!?)

気をつける時期はいつ?

肝心の、観光に気をつける時期は、”その年に選挙があるかどうか”で少し異なりますが、何となく予測するなら、ポイントは下記の通り。

(1)
予算年度が毎年10月から9月末ということを考えると、少なくとも新年度の半年を過ぎる3月までには予算案が可決するだろうから、4月から9月末までの政府機関閉鎖は考えにくい。なので、その間の観光は安全でしょう。

(2)
4年の大統領任期の中間に行われる国会議員選挙、いわゆる中間選挙の年(2018年、2022年、2026年・・・)は、上院・下院の与野党勢力図が変わることが多い。そのため、中間選挙(11月)後の年末年始(今回で言うと2018年の年末~2019年年始)にかけては予算案で揉める可能性が高い。
逆に、与野党ともに中間選挙の直前に政府機関閉鎖して反感買ったら選挙の票に影響が出るので、10月に閉鎖することは考えにくい。暫定予算も、おおむね12月初旬まで設定することが多いので、11月も大丈夫かと。

(3)
大統領選のある年(2020年、2024年、2028年・・・)は、交代する大統領の最後(12月)と、新大統領就任(1月)の場に水を差すとは考えにくいので、年末年始に政府機関を閉鎖するような事態にすることは考えにくい。また、大統領選の最中に、政府機関を閉鎖して国民の反感を買うことは与野党とも避けたいだろうから、選挙前の10月も安全だろう。年始以降も、新大統領が就任して、さっそく政府機関閉鎖のカードを切ってまで揉めるとも思えないので、全体的に見れば大統領選のある年の10月から翌年3月も安全だと考えられる。

(4)
選挙の無い年(2019年、2021年、2023年・・・)は、予算切れの10月以降すぐに議会が紛糾する可能性があるので、10月は意外と危ないかも。10月に本予算が通らなかった場合は、3月ぐらいまで揉める時間はたっぷりあるので、クリスマスのホリデーシーズンにわざわざ水を差すことを避けるだろうから、逆に12月は大丈夫かも。その代わり、年明け~3月までが危ないかもしれない。

まあ、政治的な進捗は常に変わるので、この考え方が正しいわけではないですが、一つの考え方として参考までに。

もっと前に何とかならなかったの?

政府機関閉鎖なんて、国民に不便を強いて反感を買う前に何とかならなかったのでしょうか?
民主党議員も共和党議員も、政府機関閉鎖すれば地元有権者から反感を買うはず。何で妥協しないのでしょうか。
また、そもそも、中間選挙前の10月、まだ上院・下院ともに共和党過半数だったのだから、ねじれ国会ではなかったはず。そのときに何で予算を通さなかったのでしょうか?

これには、アメリカ議会にある”あるルール”と、”大統領拒否権”という、日本にはない特殊なルールがあるからです。

それについては、また次回。それまでに政府機関閉鎖が解けているといいですね。

この記事の著者

編集部 チーフライター Mr. Richie
人生とは面白いもので、齢(よわい)40をすぎて突然アメリカで生活することになりました。海外初心者の私ですが、本ブログ唯一の男性ライターとして、ちょっとウンチクになるようなものも紹介したいと思ってます。

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